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2022年10月28日
形と機能
20世紀初頭に登場したT型フォード。
自動車製造において流れ作業方式を取り入れ、大量生産を実現した機能主義・合理主義の象徴的な存在。
『かたちの理由』
様々な角度から形の理由について書かれている本で、本自体のデザインもお気に入りです。
少し前に読んだのですが、ここで紹介しようと思います。
前半の章では、モノの形は素材の性質、加わる力、それ自体の大きさによって決まるといいます。
例えば、鉄は引張りに強い、コンクリートは圧縮に強い、木は曲げに強いというふうに、素材の特徴は様々。
建物を一棟建てるにしても、高さや床面積、また各部材の力の受け方によって使用する材料も変わります。
また形と機能の章においては、専門化した道具と一般化した道具の逆転した関係について書かれています。
専門化した道具は一つの機能に対して多くの形が与えられることがあります。
例…大工や彫刻家は同じ彫るという作業でも数十もの道具を使い分ける。
一方で、多目的化した道具なら一つあればある程度のことは十分で、そうした道具は形がシンプルなことが多いです。
例…シンプルな形のスプーンは掻き混ぜる、食べ物を運ぶ、量る、すくう、切る、つぶす等様々な役割を一つでこなす
社会的なニーズもまた、モノの形に影響を与える要素です。
人間社会で長く受け入れられているデザインは色々ありますが、共通する要素は経済性。
特に質より量が求められるような社会状況では、最小限のエネルギー、最小限の材料で、最大限の利益と効果を生み出すことが求められます。
冒頭のT型フォードは、効率的な生産が可能なデザインを追求し、その結果生産台数において世界を席巻しました。
ですが、社会の関心は低価格で画一的な自動車から離れて、新しいスタイルを求めるようになりました。
生産する上で最も効率的であったデザインの自動車は、多様なスタイルの自動車に取って代わられたのです。
「形態は機能に従う」
シカゴ派の建築家、ルイス・サリヴァンの言葉です。
著者はこの言葉の真意を、“最終的な形を決めるデザイン手法”を意味するのではなく、“進行中のプロセス“を指す言葉だと述べています。
つまり、機能性を追求する限り、形態は変化し続けるということになります。
モノの形態の変化を進化論的に考えるのは面白いですね。
以上、設計部池内でした。