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WORKS 2023年02月17日

母の家 2題

建築家 ル・コルブジュが両親のために建てた
わずか18坪の小さな家はレマン湖畔にある。

コルブジュ36歳の作品で父はここに越して
1年ほどで亡くなり、母は36年住んで101歳の長寿を全うする。
よって
「母の家」と呼ばれる。


地盤のもろさを考慮して船のような構造になっていたり
近代建築の5原則のうち
横長窓、屋上庭園などが現れた作品であり
「住宅は住むための機械である」
という理論を実践する
等々
近代建築の宝石と呼ばれて
見学可能なために世界中から建築を学ぶ者たちがやってくる。

のだが
個人的にこの家を見学して感じたのは
そういった建築学的価値もさることながら
なんといっても
両親に対するコルブジュの気遣いに溢れた設計に
心を打たれた。
横長の窓はレマン湖と一体になって、
18坪の家がとてもダイナミックな空間に
変貌するマジックでもある。

庭の塀に穿たれた穴もしかり、
プライバシーを保ちつつ、
今で言う
「ほっこり」空間を生み出す。
細部を見ると照明や取っ手など
両親に心地よく過ごしてもらう気遣いが
随所にみられる。


話は変わって
日本では・・・
釧路出身の建築家 毛綱毅曠(もづな・きこう)
反住器(はんじゅうき)を建てた。

一見わからないが
断面図を見ると

やはりわかりにくいが
平面図なら

何を見てもわかりにくい・・・
要するに
入れ子構造と言って
立方体の中にもう一つ立方体がある
マトリョーシカみたいなもんと
思ってください。

この家に建築家の母は住む。
一見住みにくそうに見えますが
入れ子の外の箱に守られて中の箱で窓を開けても
直接冷気が来るわけでなく、
大きな空気層に囲まれた快適な空間が用意されている。
限られた敷地の中で住宅密集地で
いかに光を住居に取り組むかを考え抜いた結果が
反住器。

母はこの家に長く暮らした。

奇をてらったように見えても
自身を売り込む理論に乗せても
住む人の生活に対する真摯な設計態度があって初めて
良い家となる。

森が書きました。
 

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