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EVENT 2025年11月07日

富弘美術館

自然豊かな山間に佇む、箱型の建築。
 
 

様々な素材が外壁に使われている以外は、大きな特徴のない外観に思えます。


富弘美術館
この地で生まれた画家であり詩人の星野富弘氏の作品を展示する美術館で、aat+ヨコミゾマコト建築設計事務所の設計です。


衛星写真で見ると実はこんな感じ。

大小さまざまな円が集まったシャボン玉を連想させるプラン。
展示室、ロビー、ライブラリー、カフェ、トイレ、さらには事務室、収蔵庫、機械室などのバックヤードまでもが円形となっています。
接点にあたる開口を出入りして円から円へと移っていきます。

館内は撮影不可ということで、帰ってから描いたイメージ

鋼板を合わせてできた開口部の見込みは驚くほど薄く、設計・施工共に精度の高さが窺えます。

体験してみて感じたのは、自分がどの位置にいてどの方向を向いているのかわからなくなること(全ての部屋が円形なので自分の位置を定位するものがない)。
中心⇔周縁という空間的性質と室によって異なる内装や設えにより、作品に向き合えるような展示空間となっていること。
同時に全てが曲面であるがゆえに滑らかな移動空間となっていること。
ダイアグラムが立体としてそのまま立ち上がったような建築ですが、空間の広がりや豊かさは想像以上でした。

館内のライブラリーにあった建築雑誌には、金沢の21世紀美術館(設計:SANAA)とこの富弘美術館が対比して紹介された記事が載っていました。
 
【21世紀美術館 /  富弘美術館】
なるほど、大きな幾何学【円/矩形】の中に小さな幾何学【矩形/円】の単位を並べる構成、回遊性のある自由な動線計画など共通点をもちながらも全く対照的なプランです。

【包括 / 切断】
円形の輪郭で全体を大きく囲い込む / 正方形でフレーミングし各部の切断面が露出する
【開放 / 閉鎖】
全方位から出入りが可能 / ほとんどの面は閉じていて出入口は最小限
【離隔 / 隣接】
矩形単位は互いに間隔を取って配置 / 円形単位は互いに接して行き来できる
【軸性 / 極性】
XY方向に通路が通る軸性の空間/ それぞれの円が中心を持つ求心的な空間
【抽象 / 具象】
ガラスと白い面による抽象的な表現 / 色や質感の異なる素材を散りばめた具象的な表現
【抑揚 / 単調】
それぞれの空間の高さが異なり変化に富む / すべての空間が同じ高さで水平方向にのみ広がる

 レム・コールハースや妹島和世が先駆となり2000年代に多く見られるようになったダイアグラムを立体化する設計手法。
形態よりも空間、物質よりも現象、機能の指定よりもアクティビティの誘発、そういったポストモダン以降の建築的価値観の変化を表しているのかもしれません。


色々と考えに耽りつつにテラスに出ると草木湖畔の景色。


高さを抑えた箱型の外観と周囲の山並み、星野富弘氏が慣れ親しんだ自然に馴染んでいます。

以上、富弘美術館の紹介でした
池内

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